大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和30年(う)35号 判決

一、原判示第三及第四の各事実につき包括一罪と認めたのは誤りであるとの趣旨の主張について。

原判決がその第三及び第四の事実すなわち、被告人は工藤アサと共謀の上、自宅において、(1)昭和二十九年一月二十五日頃以降同年一月三十一日頃までの間原判示別表記載のとおり三百数十回に亘り飛島某外多数の者に対し覚せい剤二cc入合計千七百八十四本を有償で譲渡し、(2)昭和二十九年五月十九日頃以降同年五月二十四日頃までの間、原判示別表記載のとおり百七十回位に亘り蒔田昭三外多数の者に対し覚せい剤二cc入合計七百七十五本を有償で譲渡した各事実を認定し、右(1)、(2)の各事実をそれぞれ覚せい剤有償譲渡罪の一罪として処断し併合罪の規定を適用しなかつたことは所論のとおりである。

しかし、原判決挙示の証拠によれば原判示第三及び第四の各事実を認めるに足り、これによれば、共謀共同正犯における実行担当者たる工藤アサにおいて単一の犯意の下に短期間内に同一場所において原判示第三及び第四の各覚せい剤の有償譲渡行為を行い、被告人はこれにつき共謀したということを認めうるのであるから被告人の右各犯行はそれぞれこれを包括して評価し、覚せい剤の有償譲渡罪の一罪と認むべきである。したがつて原判決がこの見解に立ち原判示第三及び第四の各所為をそれぞれ包括一罪として処断し、併合罪の規定を適用しなかつたのは正当であつて、原判決には所論のような事実を誤認し、ひいて法令の適用を誤つた違法は存しない。論旨は理由がない。

二、(省略)

三、職権で原判決の法令の適用の当否を調査するに、原判決は原判示第一、第三、第四の各覚せい剤の有償譲渡の事実に対し、各覚せい剤取締法第十七条第三項、第四十一条第一項第四号を原判示第二の覚せい剤不法所持の事実に対し同法の相当法条を適用し以上四個の罪に併合罪の加重をし、結局犯情重い第三の罪の刑に法定の加重をした上、被告人を懲役六月に処している。しかし原判示第三及び第四の各犯行はいずれも昭和二十九年一月中又は同年五月中の所犯に係り右各犯行に対しては改正(昭和二十九年六月十二日法第一七七号による改正)前の覚せい剤取締法第十七条第三項、第四十一条第一項第四号、改正後の同法附則第二項を適用すべきであり、従つて又改正後の刑より軽い第三の罪の刑に法定の加重をすべきものではない。それで右各犯行に対し改正法を適用し、かつ、第三の罪の刑に併合加重をした原判決には法令の適用を誤つた違法があるけれど、本件は検察官のみの控訴に係り、原審は重い改正法を適用しているのであるし、かつ、本件の情状に照らし原判決の科刑は相当と認められるので、右違法は判決に影響を及ぼすこと明らかとはいゝえず、破棄の理由とはならない。

(裁判長裁判官 松村美佐男 裁判官 岡本二郎 裁判官 兼築義春)

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